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2007/11/29

オリヲン座からの招待状

 

_file_td_mv_pic2_3_3 《劇場鑑賞》 

 

 京都、西陣。

 路地の奥にひっそりと佇む

 オリヲン座の

 半世紀にわたる物語。

 

 

 

さて突然ではございますが、

昭和25年の会館以来半世紀以上にわたって

地元の皆様に愛され親しまれて参りましたオリヲン座は、

誠に勝手ながら今秋をもちまして、閉館いたすことと相成りました。

 

 

 

良枝(樋口可南子)は、懐かしいオリヲン座から、
謝恩最終興行の招待状を受け取る。
幼馴染の夫、祐次(田口トモロヲ)とは、
いつしか気持ちが通じなくなっていた。
そんな祐次に良枝は、一緒にオリオン座に行ってほしいと頼む。
そして、それを最後に終わりにしようと…

昭和32年、
京都西陣の小さな映画館に、ひとりの若者がやってくる。
途中からでもいいから入れてほしいと頼む若者に、
トヨ(宮沢りえ)は、「ええよ、お金いらんから。」と入れてやる。

その若者、留吉(加瀬 亮)は映画が終わると、
館主で映画技師の松蔵(宇崎竜童)に、
ここで働かせてほしいと頼み込むのだった。

親兄弟もなく天涯孤独の留吉は、「おやっさん、あねさん。」と
松蔵とトヨを慕い、よく働き映画技師の勉強もよくした。

ところが、数年後松蔵が急死し、
オリヲン座は閉館の危機に瀕するが、
「オリヲン座をほかしたらあかん。」という松蔵の言葉どおり、
留吉は、トヨにオリヲン座を続けるよう懇願するのだった。

 

(多少ネタバレありです。)

 

世は高度成長時代。家庭にテレビが普及し始め、
あれほど賑わっていたオリヲン座からも、客の姿が消えて行く。

そんな時、未亡人になったトヨと技師として働く留吉の間に、
嫌な噂が広まり、周囲の人たちもオリヲン座を避けるようになる。
毎日のようにオリヲン座に遊びにくる祐次と良枝を、
二人は、我子のように可愛がるのだった。

 

どこか懐かしさを感じるような、西陣の路地裏と『オリヲン座』の佇まい。
オリヲン座にかけられる、昔懐かしい映画(シャシン)の数々。
トヨと留吉の、やさしい京都弁。

そんなものたちが、実はつらい物語を優しく包んでいる。

周囲の冷たい目に耐え、どんなに貧乏をしようと、
「オリヲン座をほかしたらあかん。」という松蔵の言葉を
守り続けたトヨと留吉。

二人にとっては『オリヲン座』こそ、すべてだったのだろう。
蚊帳を隔てて結ばれた手と手は、二人の思いのすべて。

 

トヨと留吉に会いたいと、久しく帰っていなかった故郷に戻り、
謝恩最終興行にやってきた祐次と良枝の前には、
長い時を数えても、少しも変わらない、
留吉(原田芳雄)とトヨ(中原ひとみ)の姿があった。

別れを決意した祐次と良枝だったが、
お互いを思いやって過ごした子供時代の思い出が、蘇ってくる。

懐かしい人たちの前で、謝恩最終興行の挨拶をする留吉。
それを、映写室から見守るトヨ。

その挨拶の中で、トヨを「つれあい」と言った留吉。
そう呼べるようになるには、どれだけの時が必要だったのだろう。

でも、二人の間は、
やっぱり、あの時の蚊帳の中で握られた手のままだったのかもしれない。
そう思うのは、私だけだろうか。

 

これもまた、私が生まれる少し前の昭和の物語。

どうしても、少し前に見た「ALWAYS」と比べてしまう…

「ALWAYS」は、古き良き昭和を“題材”に、
逞しく明るく生きる“人々”を描いた作品。
だから、東京タワーの建設や、集団就職や、
高度成長の成功と挫折、そして戦争の影が残る人々など、
昭和の光と影をうまく織り交ぜて描いた、とっても良い作品だと思う。
なんというか、泣かせどころも心得ている印象なんだなぁ。

「オリヲン座」は、松蔵とトヨと留吉、そして祐次と良恵。
それぞれの、愛と優しさをじっくりと丹念に描いた作品。
その時代が、たまたま昭和だっただけのこと。

そんな優しさと、真っ直ぐな純粋さに、
昭和生まれのおばちゃんは、とっても弱いんだ。
もう、正直最初から最後まで涙が流れっぱなしだった。
どこがどう…、という訳でなく涙が流れる。
号泣するんじゃなく、ただ涙が流れてしょうがなかった。

 

「ALWAYS」に比べ、地味な感じのする本作は、
評価も分かれるのかもしれない。

でも、私はこんな静かな作品が、どうにも好きなんだなぁ。

 

 

そういえば。。。
昨年亡くなった夫の父。

30年前くらい前まで、小さな映画館をやっていたんだった。
映画を見ているときは、すっかり忘れていたけれど、
なんだか、唐突に思い出した。

もちろん、私が結婚するずっと前のこと。
話に聞いたことがあるだけだけど、
確か、松蔵さんがかぶっていたのと同じような、
ハンチングをかぶった義父の若い頃の写真があった。

残念ながら、夫が映写室で遊んだという話は、
全く聞いたことがないが。。。(笑)

 

 

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コメント

こんばんは♪

TBありがとうございました。

私もね「昭和」に弱いです。
なんででしょうね。
過去や思い出を、多少は美化しているのかもしれないけど「自分の身の丈にあった暮らし方」というのをしている人が、今よりも多かったのかもしれないですね。

riさんのお義父さんは、映画館をやっていたんですね!!
をを~すごいなぁ。
今はもう建物は残ってないのですか?
もしかしたら、過去にriさんが知らないようなドラマがあったかもしれないですよ。

投稿: チョコ | 2007/11/30 20:40

こんばんは。
TBを受信できなくてごめんなさい。(どうしてだかわからなくて、重ねてごめんなさいです)
コメントもありがとうございました。

原作の世界を壊さず、大切なものを守って生きて来た人たちを
美しく描いた、いい作品でした。
普通の生活の中の「音」(鰹節、柱時計、煮物、下駄、自転車…)が随所で聞こえて、
日本人らしい感覚が生きていて・・・
語り始めたら終わらなさそうなのに、言葉にするのが難しい、
いつまでも大切にしたい作品と、また出会えてとても嬉しく思っています。

投稿: 悠雅 | 2007/11/30 23:40

チョコ様

ホントになんででしょうね。
こんなに昭和に弱いのは。

私たちが子供時代を過ごした少し前から今まで、
その時代の日本の変わりようは、
とんでもないスピードだったのでしょう。
だから、忘れている事もたくさんあって、
それを見せられると、なんとも言えない気持ちになってくるのでしょうか。

>「自分の身の丈にあった暮らし方」

今は、自分も含めて、忘れている人が多いのかもしれません。

映画館はね、もう残っていないんです。
やめるきっかけも、火事だったらしいのです。

その頃の映画館主って言ったら、ハイカラさんだったんでしょうか。
(あれ、それは大正時代か?!)
義父も、洒落たハンチングをかぶって、結構男前でした。(笑)

私も、一人で行って良かった~と思った作品でしたが、
ダンナも一緒に行ったら、「物語」思い出したかしら。。。

投稿: ri | 2007/12/01 09:41

悠雅様

悠雅さんのレビューを読ませていただいて、
絶対見ようと決めていて、
「ALWAYS」を観にいった時予告が流れ、
益々見たくなった作品。
やっぱり、とってもとっても素敵な作品でした。

伝えたいことはたくさんあるのに、
言葉にすると、何も伝えられない。
レビューを書いていて、
また文才のなさにイヤになっちゃう。。。
時々、そんな作品に出会います。

ヨーロッパの小品に、そんな作品が多いような気がします。

この作品は、日本的な風情が全体から匂ってくるような作品ですが、
なにかヨーロッパ的な感覚も持ち合わせているような、
そんな気がしています。

やっぱり、「ニューシネマパラダイス」を思い出すからでしょうか。(笑)

ホントに、大切にしたい良い作品でした。

投稿: ri | 2007/12/01 09:54

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京都、西陣の小さな映画館の物語。映写技師の松蔵(宇崎竜童)はシベリアから復員後、夢だった映画館を持った。妻のトヨ(宮沢りえ)が、職人気質で無愛想な松蔵を支え、映画館は毎日たくさんの客でにぎわった。まだ日本が貧しかった時代、映画は貴重な娯楽だった。ある日、松蔵とトヨの前にひとりの青年が現れる。留吉(加瀬亮)と名乗る青年は、天涯孤独の身で、仕事もなく、松蔵に弟子入りしたいと頼み込むのだった。松蔵に弟子入りを許された留吉は、必死で働いた。時折、疲れを見せる松蔵に楽をさせたいと、映写技師としての勉強も一... [続きを読む]

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