進化し続ける俳優 ジョニー・デップ
実はもう1冊手に入れていた『キネマ旬報』。
2006年4月号は、タイトルに惹かれて迷いなく手に取ったが、
こちらの2004年10月は、『シークレット・ウインドウ』の公開の頃で、
一緒に見つけたので、何気なくお持ち帰りしたものだった。
でも、中身はと言うと、
またまた、佐藤友紀さんの記事が掲載されていたので、ちょっとご紹介。
この頃は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』が大ヒットした翌年。
ジョニーが、ようやくメジャー作品でブレイクし人気も急上昇していた頃。
そのジョニーシンドロームともいえる現象が、
衰えるどころかますますヒートアップし、
確固とした地位を築いてしまった2006年とは、
佐藤さんのニュアンスも若干違っているのが、興味深い。
そのところを、佐藤さんは、
(ハリウッドのお偉方にとって)
ジョニーは、鎖でつないでおきたいくらい大事な存在なのだろう。
が、ジョニーはホテルの従業員に対するのと同じ、全くの自然体。
と表現している。
また、この頃ちょっとクセのある若手俳優にインタビューすると、
「憧れの人」はジョニーが独占していたらしい。
「ジョニー・デップの出演作品で、ジム・ジャームッシュ監督の、
『デッドマン』をちゃんと評価しないなんて、本当、アメリカってのは
情けない国だよな。」
ブラディ・コルベット
「いや、『デッドマン』だけでなく、ハリウッドのお偉方は、『パイレーツ』
以前の作品は認めてないかもしれないぜ。」
ジェゼフ・ゴードン・リベット
残念ながら、私はこの二人は全く知らないのだが、
『パイレーツ』ではなく、『デッドマン』ってところがなんともいい感じ。
一番楽しかったのは、ジョナサン・リース・マイヤーズの話だ。
「ヴァネッサには妹はいないのかな?」
その手があったのか!?ジョニーとの絆作りをもくろんでいるほど。
もちろん冗談話だが、目が結構真剣なのがおかしくもあり…。
なるほど、ジョニーと義理の兄弟なら、一気に距離が縮まるかも。
なら、私は…
うちの次男クンにでも期待しましょうか!
リリー・ローズのお婿さんに!?
そしたら、ジョニーと私は義理の。。。なんて言うんだろ???(爆笑)
そして、若手だけでなくベテラン達も。
トニー・レオンに『インファナル・アフェア』のリメイク権を
ブラッド・ピットの製作会社が買ったという話を聞いたとき。
「ブラッド・ピットには、あなたとアンディ・ラウがやった役の
どちらを演じてほしい?」と聞いたら、「アンディの役のほう。」と言う。
「ならば、あなたの役は誰に演じてもらいたいの?」
この時、トニー・レオンは間髪を入れず「ジョニー・デップ」と、
真顔で答えたのだ。
あったよね、ジョニーとブラピの共演の噂。
案外、こういう発言が元になっているのかもしれない。
佐藤さんも書いていらっしゃるが、ジョニーとブラピもだし、
ジョニーとショーン・ペンで『路上』を、なんて話もあったが、
「今からでも遅くないから、実現しないだろうか。」と。
ホントに、こんな共演が実現したら、ワクワクしない訳がないのに!
共演者については、ジョン・タトゥーロのエピソード。
数年前のヴェネチア映画祭で、『夜になるまえに』のジョニーを見て、
一人地鳴りのような声を出して笑っていた。
「親しい人のそういう反応を誰かから聞くのが、一番楽しいんだ。」
とジョニーも喜んでいた。
ちなみに、前回の号のインタビューでもジョン・タトゥーロは、
この作品については、
ストーリーの流れを邪魔しない範囲の最大レベルで、
ジョニーは自分の役を楽しんでいたから。凄い俳優だよね。
と発言しているし、『耳に残るは君の歌声』で共演した時も、
監督のサリーポッターはもちろん、僕の相手役のはずのケイトまで、
ジョニーに夢中になっていて。でも嫉妬する気も起きなかったよ。
だって、ジョニーを一番愛していたのはカメラそのものだったんだから。
なんて、素敵な素敵な賛辞を送ってくれている。
そして、一番興味深かったのが、
ジョニーの作品選びについての佐藤さんの見解。
ジョニーの場合、仕事を受ける基準が「人間関係と直感」
以外の何者でもないのが、むしろ清々しい。
つまり、ジョニー論を書く者としては、
「選ぶ作品に一つとして同じテイストのものがないのがさすがだ」とか
何とか書きたいのに、結構何らかの形で被っている作品も多いのである。
暗に、「一つとして同じテイストのものがない」と書いてあるものが多いけど、
そうじゃないのよ、とダメだししているようにも思える。
もちろん、いい意味でのダメだし。
『ネバーランド』と『リバティーン』で、
続けて実在の作家を演じたことについて。
「僕は手書き派なんだ。それこそペンの走らせ方まで
自分でいろいろと工夫をしてみるのが楽しくてね。
誰もそんなところまでチェックしてないのにさ(笑)」
と、ジョニーは発言していたらしい。
それを受けた佐藤さんのコメントが、笑えるのだ。
いくら「書く行為」が楽しいからといって、
これが二コール・キッドマンなら、再び作家役を引き受けたりはしないだろう。
つくづく計算とは無縁な男なのだなと、感心するしかない。
なるほど、ニコ様ならそうかもしれないと、妙に納得してしまう。(笑)
ジョニーは、作品選びもキャリアの積み方も、
計算なんてしている訳じゃない。
人間関係、監督や共演者。
そして直感、台本を読んだ時、それ以前の台本がないときでさえ直感でしかない。
進化し続ける俳優、ジョニー・デップ。
次ぎの作品は、初めてのミュージカル。
彼には、「リスク」なんて言葉は無縁だ。
今までも、これからも、
直感とひらめきで、次々と新しい役柄を演じていってくれるだろう。
よき「性格俳優」。
だれも、彼の行き着くところはわからない。
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コメント
riさん、こんばんは。
『キネマ旬報』の表紙、ナイスですね~。
2006年4月と2004年10月でしたか。。今更残念に思います。
これはお宝ですね♪
>ジョニーはホテルの従業員に対するのと同じ、全くの自然体。
ここがジョニーの素敵なところですね。
>つくづく計算とは無縁な男なのだなと、感心するしかない。
無欲の勝利、という言葉が浮かびます。
人を惹き付ける魅力と才能の賜ですね。
ジョニーの到達点はどこなんでしょうね。
確かダスティン・ホフマンがそれを『楽しみだ』と言っていたような気がします。
ず~っといつまでも見守って行きたいですね。
投稿: Rei | 2007/10/30 00:14
Rei様
たまたまなんですが、
キネマ旬報がいっぱい古本屋さんに並んでいて、
たぶん誰かが一気にまとめて売ったのかな、
なんて余計な想像しながら物色していたら、
見つけたんですよ、この2冊を。
なかなか表紙も素敵でしょ。
でも、中の記事もとっても読み応えがあったので、
思わず紹介しちゃいました。
>ジョニーの到達点はどこなんでしょうね。
そうそう、どこまで行くんでしょうね。
たぶん、どこまで行っても終わりということはなく、
私たちを裏切り続けていってくれるんじゃないかと思います。
もちろん、いい意味で裏切ってくれるんじゃないかと…
投稿: ri | 2007/10/31 15:48
riさん♪
とても興味深く読ませて頂きました!
素敵な記事有難うございます^-^*
「努力する天才」なんて形容詞がありますが、
ジョニーはまさに努力をも“努力”と自分では
感じていないのでしょうね。
そういえば、今週の「SUMAxSUMA」に
マット・デイモンが出演されていたんですが
(ご覧ですか?)
彼はある作品の役作りの段階で
「SWAT」の隊員からその立ち振る舞いを
徹底的に学んだ・・・と、コメントし
「いかに、自分がその役作りへ没頭していたか」を
語って、それに対してキムタクが
「あんたは凄いよ!」的なコメントをしてました。
確かにわたしも、「凄いな~」って関心したんですが
ジョニーだったら、あまりその辺の所を
真面目に語ったりしないんだろうな・・・
って思ったんですよね。
もちろん同様な事はやっていても
“あえて、語らない”みたいな・・・。
>「自分でいろいろと工夫をしてみるのが楽しくてね。
誰もそんなところまでチェックしてないのにさ(笑)」
↑このコメントを読んで、そんな風に感じてました^-^:
「俳優なんて仕事は、真面目になんてやるもんじゃないよ」
と、さらっと言い切るジョニーが
その“余裕”が、やはり!
【カリスマ】なんでしょうね。
長々とすみません^-^;
投稿: NIMO | 2007/11/01 23:59
NIMO様
ジョニーの場合、
ウォンカさんやスパロウ船長などは、役作りを心底楽しんでいる。
ロチェ様など実在の人物は、その役になり切ってしまう。
だから、他人が見たらすごい「努力」でも、
ジョニーにとっては、「努力」ではないのでしょうね。
スマスマは見ましたよ。
私はあの場面で、実は、
「それくらい役者ならみんなやってるんじゃないの。」
なんて、冷めた感覚で見ていました。
そうそう、「みんな」じゃなくて、
「ジョニーだってやってるわよ!」って思ってたんだわ、多分!
>“あえて、語らない”みたいな・・・。
>「俳優なんて仕事は、真面目になんてやるもんじゃないよ」
と、さらっと言い切るジョニー
そうなんですよね。
そこらへんが、ジョニーのカッコいいところですね。
いつも、ジョニーの話す言葉は、
洒落ていて温かくて、でも気負いなんてなくてサラッとしている。
つくづく、やっぱり、
素敵な男です♪
投稿: ri | 2007/11/02 02:31