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2007/10/15

エディット・ピアフ~愛の讃歌~

 

Dea69b74a011112e83c8d554cd9acaef  《劇場鑑賞》

 

 壮絶な人生を生きた、

 一人の歌姫の物語。

  

 愛を与え、

 愛を求め続けた、

 一人の女の物語。

 

 

 

 

1915年、第一次世界大戦の真っ只中のパリで、
エディット(マリオン・コティヤール)は誕生した。
父を兵役に取られ、母は路上で歌を歌い日銭を稼いでいた。

そして母が蒸発し、祖母が経営する娼館に預けられたエディットは、
娼婦ティティーヌ(エマニュエル・セニエ)たちに可愛がられ、
つかの間の幸せな日々を送るのだった。

でも、ある日父がエディットを迎えに来る。
「私からエディットを奪わないで!」と泣き叫ぶティティーヌを振り切り、
馬車が出発する。
それから、大道芸人の父との放浪の旅が始まるのだった。
「お前も何か芸をやれ。」と言われ、
エディットが初めて人前で歌った歌は、「ラ・マルセイエーズ」だった。

1935年、エディットはパリの街角で歌い、日銭を稼いでいた。
そこで彼女は、名門クラブのオーナー、ルイ・ルプレと出会い、
歌手への第一歩を踏み出すのだった。

 

それからの彼女の人生は、
波乱万丈とという言葉でも足りないくらい。

成功、挫折、スキャンダル、恋、失意、再生。。。

めくるめく人生の中、彼女が求め続けたのは何だったのか。
彼女が本当に欲しかったものは何だったのか。

 

私は、こんな歳なのに、
恥ずかしながら「エディット・ピアフ」という名前を、ほとんど知らなかった。
ただ、あまりにも有名ないくつかの歌は、もちろん知っていた。

劇中で歌われる、エディット・ピアフ本人の音源の歌は、
「シャンソン」というジャンルを、再認識させられるほどに素晴らしかった。

それにしても、
シャンソンには、やっぱりフランス語が良く似合う。

 

「エディット・ピアフ」という人は、どこか「美空ひばり」を思い出させる。
世紀の歌姫として誰もが認める才能とは裏腹に、
私生活では不幸が次々と襲ってくる。
そして、早すぎる死。。。

フランスと日本。
二人の歌姫には、似通ったところが多くあるような気がする。

 

エディットが、一生に一度の恋人と言ったマルセル。
彼が死んだ時、狂ったように泣き叫ぶエディットと、
その声に被るように流れる、「愛の讃歌」。
「愛の讃歌」が、こんなに悲しい歌に聞こえたのは初めてだった。

私は、「水に流して」という曲が、とっても心に滲みた。

   いいえ、私は何も後悔していない
   私に人がした良いことも、悪いことも
   何もかも、私にとってはどうでもいい

「これこそ私が待っていた歌だわ。」と言って、
弱った体を引きずるようにして舞台に立つエディット。
そして、魂をしぼり出すように歌い上げるのだった。

  

*********************************************************

 

私は、最初、「愛の讃歌」を朗々と歌い上げる
エディット・ピアフの姿を想像していた。
でも、「愛の讃歌」が聞けるのは、あの一場面だけだった。

それも、原題をみると頷ける。
原題は、「LA VIE EN ROSE」~バラ色の人生~なのだから。
いくら日本では、「愛の讃歌」が有名だとはいえ、
この邦題でいいんだろうか、なんて思ってしまった。

 

スラムに近い下町で生まれ、下品で世間知らずで、
どうしようもないすれっからし。
成功してからは、激しい気性やわがままさも見せるエディット。

でも、たくさんの人たちが、彼女にかかわり、
友情を育み、死の時まで彼女を見守った。

ジャン・コクトーやマレーネ・デートリッヒと交友を持ち、
シャルル・アズナブールやイヴ・モンタンを世に送り出したと言う
彼女の才能と、人間的な魅力。

残念ながら、それが描ききれていなかったようにも思う。
マリオン・コティヤールの体当たりの素晴らしい演技で、
「エディット・ピアフ」という人間を、実に生き生きと見せてはいるのだけれど。

いろんなエピソードを、時系列的に並べるのでなく、
効果的に組み立てなおして、一つのドラマとして作り上げる構成。
それだけに、登場人物も背景が見えず、
ついていけないところもあり、「あれ、誰?」ということもあった。
酒とドラックに溺れても、彼女を愛する人々がいる。
それは、彼女に人間的な魅力が溢れていたからに違いないのだが、
そのあたりが、もう一つ伝わってこなかった。

単に私の理解力が足りないせいかもしれないが。。。

なんだか、
ジョニー・デップがロチェスター伯を演じた「リバティーン」と同じ。
俳優たちの素晴らしい演技ばかりが際立ってしまった気もするのだ。

 

それにしても、
名曲の数々にのせて語られる、
エディット・ピアフの壮絶な人生。

劇場で見れてよかっと思う作品だった。

パリの街角で歌っていた頃のエディット。
彼女が、モンマルトルの丘を息を切らして駆け上がり、歌う。

この場面の彼女が、一番生き生きと美しかった。。。 

 

 

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コメント

こんばんは、riさん♪

あたしもこの作品、初日に鑑賞しました。
全体を通して「痛み」を感じました。貧しかった幼少期。生きるために路上で歌う日々…でもいきいきとした表情で歌う姿が印象的でした。成功してからのエディットの傲慢さには、少なからず嫌悪感を感じましたが、最後までプロの歌手でいたいという姿勢はすごいと思いました。
時間の流れがバラバラ(回想のような形?)だったので、結構あたしも混乱しました。なぜ友達は最後までエディットのそばにいたのか。もっと人物背景やエディットについで描写して欲しかったです。
「痛み」を抱えていたからこそ、エディットの歌やステージは多くの人に感動を与え、輝いていたのかなぁと思いました。

それにしても主演の女優さんは、まさに魂の演技でしたね。怖いと感じるくらい…圧巻でした。

投稿: ひまわり | 2007/10/16 20:44

ひまわり様

確か、ひまわりちゃん、
この作品で、ひとり映画デビューしたんじゃなかったかしら?

すごいよ!
高校生でひとり映画デビューしちゃうなんて。
私なんて、「デッドマンズ・チェスト」の時に、
はじめてひとりで観にいったんですもの。

でも、それからは病み付きになって、この作品もひとりで行ってきました。(笑)

それにしても、壮絶な人生。
彼女の歌は、その人生をしぼり出すように歌っているような気がしました。

こういう伝記的な作品は、エピソードや背景をどこまで描くかが、
作り手の、大きな選択なんでしょう。
この作品などは、あえて描いてないのかもしれません…

投稿: ri | 2007/10/18 00:20

こんにちは。
わたしたちの年代でも、
シャンソン好きな母の影響でもなければ(わたしもそうではないので)、
エディット・ピアフは馴染みの薄い外国の歌手でしかないのは仕方ないでしょうね。

日本人にとって、美空ひばりさんの半生を知る機会が多いように、
フランス人にとっては、あまりに有名な周知の事実を順に描くよりも、
「ひとつの作品の題材」として、ピアフの人生を選んで作られたように感じました。
誰もが知る事実を普通に描くことをあえて避けて、
今わの際の女性の、断片的な回想のように作ることで、
1人の女性を表現しようとしたというか…うまく言えませんが…

でも、『愛の讃歌』はじめ、改めて、彼女の歌ったシャンソンに
興味を持つ機会になったことは、何よりの収穫でした。
主演の女優さんの演技も素晴らしかったですね。

投稿: 悠雅 | 2007/10/18 10:14

こんばんは。
TBありがとうございました。

ひとりの偉大な人物を描くとき
なにを浮き彫りにしたいのか絞らないと
ただの薄っぺらな伝記になってしまうような気がします。
多少分かりにくい点はありましたけど
ピアフの強烈な個性は、痛いぐらいに伝わってきました。

ずば抜けた才能を持って生まれた人は、
その才能と引き換えに
平凡な幸せを捨てなくてはいけないのか。。
平凡な幸せの枠には
治まりきれないほどのエネルギーを持っているのか。

平凡に暮らして
ピアフの歌を聴いて、波乱万丈の人生を疑似体験する。
それぐらいが私にはちょうど良さそうです。


投稿: チョコ | 2007/10/18 19:48

こんにちわ。

私なんか、エディット・ピアフっていう名前は、
この作品で初めて知ったんですよ(笑)。
『愛の賛歌』だって、美輪明宏さんが歌っているのしか
知らないし(苦笑)。

シャンソンなんてオサレなものに触れる機会が
全然なかったなあ・・・。

私コレ、一応最初の1時間までは観てるんです。
でも例の出来事のせいで途中退席しちゃったんで、
今更観にいくにもなんだか出鼻をくじかれた感があって、
まだ未見・・・。もしかしたら劇場では観ないかも(苦)。

『今年度アカデミー賞最有力候補』と騒いでいる割には
それほど評判も良くないみたいだったので(苦)。

でも、ピアフに美空ひばりを引き合いに出すあたりは
「おお!なるほどお!」と思いました。ひばりちゃんも
業界の中ではかなりの波乱万丈の人生とわがまま女王
で有名だったみたいですからね・・・。
でも、誰もを魅了してやまない歌声とカリスマ性に
恵まれた歌い手。

日本でも、ひばりちゃんの映画を作ればいいのに。
そうなったら・・・主演は誰がいいでしょう?

投稿: 睦月 | 2007/10/19 11:49

悠雅様

お返事遅くなってすいません。

この作品をフランス人が見るのと日本人が見るのとでは、
受ける感覚が全く違うのでしょうね。

>今わの際の女性の、断片的な回想のように作ることで、
 1人の女性を表現しようとした

確かに、そう見るとすんなり見れると思います。
なんだかんだ書いてますが、
聞き覚えのある歌の数々と、マリオン・コティヤールの演技は、
掛け値なしで素晴らしかったと思います。

投稿: ri | 2007/10/21 01:54

チョコ様

お返事遅くなってすいません。

>多少分かりにくい点はありましたけど
 ピアフの強烈な個性は、痛いぐらいに伝わってきました。

ホントに、素晴らしい才能と個性を兼ね備えた人だったんでしょうね。
それにしても、シャンソンというジャンルを、
改めて認識させられました。

私たち、平凡な人間には、計り知れない人生。
それを疑似体験できる映画って、やっぱりいいですね!

投稿: ri | 2007/10/21 01:59

睦月様

やっぱり、出鼻くじかれるとも一つですか。(笑)

私たちの世代で『愛の讃歌』といえば、
美輪さんと、あと越路吹雪さんも思い出します。
睦月さんは知らないんだろうなぁ~。

私も、シャンソンなんてジャンルの音楽には、
触れる機会もなかったし、正直興味もなかったです。
でも、作品の中のエディット・ピアフ本人の歌声は、
とっても素晴らしかったです。

ひばりちゃんの映画の主演女優。。。

しゃれた答えと思ったのですが、
全く思い浮かばな~~~い!(苦~)

投稿: ri | 2007/10/21 02:11

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