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2007/09/24

ボルベール〈帰郷〉

  

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 《劇場鑑賞》

 

 原色の世界で繰り広げられる

 女たちの物語。

 強く、逞しく、明るく。

 そして、いつでも懸命に生きる

 女たちの物語。

 

 

 

 

 

ライムンダ(ペネロペ・クルス)は、スペインの太陽を思わせるような、
明るさとたくましさ、そして気性の激しさを持つ女性。
失業した夫に代わって懸命に働き、家計を支えていた。

そんなライムンダに、ある日二つの“死”が降りかかる。

15歳の娘パウラが、「実の娘じゃないから」と言って、
関係を迫ってきた父親を、はずみで刺し殺してしまう。
そして、その夜、最愛の叔母の死の知らせが、
故郷のラ・マンチャから届いたのだった。

大切な叔母の葬式を、姉のソーレと隣人のアグスティナに任せ、
死体を隠すことに奔走するライムンダ。
夫の死を目の当たりにした瞬間から、
ライムンダは妻の顔をかなぐり捨て、徹底的に母の顔になる。

たまたま、廃業する隣のレストランの鍵を預かっていたライムンダは、
レストランの冷凍庫に夫の死体を隠したが、
その後どうすればいいか頭を悩ませていた。

そこへ、近くで撮影をしていた映画のクルーがやってくる。
撮影クルー全員のランチを頼まれたライムンダは、
冷凍庫を気にしながらも、生活のためにも忙しく働くことになる。

一方、叔母の葬儀に出席したソーレは、
火事で死んだはずの母が生きていると言う噂を耳にする。
ソーレの前に姿を現した母は、幽霊なのか本物なのか。。。

 

女たちの過去は悲しいものだし、現実も悲惨。
そして、やっていることは決して許されないこと。

でも、そんなことは忘れさせてくれるくらい、健気でたくましく、
ウイットに飛んだやりとりも楽しい。

強く乾いた風の中、懸命に墓を掃除する女たち。
高らかな音と共に交わされる、親愛のキス。

アルモドバル監督の、故郷ラ・マンチャの大地と、
母、そして女性への、賛歌のような作品だ。

  

325137_01_03_02 たくさんの方がおっしゃっている通り、
 ペネロペは、ホントに素敵だった。

 こんなに生き生きとしたペネロペは、
 はじめて見た気がする。
 そして、こんなに豊満だったんだ!
 と、ビックリ。

 

彼女の歌う、アルゼンチンタンゴの名曲 「VOLVER」。
彼女の流す涙は、
ライムンダの涙なのか、ペネロペ本人の涙だったのか、
そう思わせるくらい、魂の歌だった。 

 

“女”とは、何者なのか。。。

弱いけど強くて、優しいけど自分勝手で、たくましいけど脆くて。
「母」であり、「娘」であり、「妻」であり、「女」。
自分も“女”なんだけど、つくづく不思議なものだと思う。

そして、お墓を掃除する様子や、
大切な人を看取る、という気持ち。

日本人が置き忘れたような感覚。
それが、スペインの大地に息づいている。

 

ラストに至っても、問題は何にも解決などしていない。

でも、不思議なやさしい気持ちになれる作品だった。

 

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コメント

こんにちは。
TBありがとうございました。

ラストシーンはわりとさらっとしたものだったので
「え?」と一瞬思ったのですが
そうですよね。
彼女達の抱えてる問題は、なにも解決していないのですよね。

でも、きっと
すったもんだしながらも
明るくたくましく生きていくんじゃないでしょうか。
時に泣き喚いたりしながらね。


投稿: チョコ | 2007/09/24 15:58

チョコ様

このお話に登場する女たちは、
皆、たくましく明るく魅力的でしたね。

ついつい、一緒に泣いたり笑ったりしてしまいました。

スペイン語のおしゃべりは、
なんだかとっても迫力がありました!
英語じゃ、あんなふうには絶対なりませんよね。

私のなかでも、今年のベスト3には入る、素敵な作品でした。

投稿: ri | 2007/09/26 00:59

こんばんわ。

そうなんですよねえ・・・。
ここに出てくる女性達のやっていることって、
犯罪なんですよね(苦)。

でもriさんが書かれているように、そんなことを
すっかり忘れさせてくれるほどに彼女たちは明るくて、
前向きでたくましい・・・。

アルモドバル監督の女性への視点っていうのは、
決して男性監督とは思えないような繊細で密度の濃いもので
いつも感心させられます。

私、今までに行った外国の中でもスペインが
一番好きだったんですが・・・あの熱くて鮮やかで力強い国の
雰囲気がこの作品にはいきいきと描かれていて、
心がジンワリとなりました。

素晴らしい1作だったと思います♪

投稿: 睦月 | 2007/09/27 23:28

睦月様

公開時、こちらでもやっていたのに見逃していた作品。
いつもの名画座で上映してくれたので、やっと観てきました。

ホントに、素敵な作品でした。

アルモドバル監督の女性賛歌3部作と言われる作品。
他の2作は未見なので、是非観てみようと思いました。

睦月さん、スペインも行かれているんですね。
スペインは、やっぱりいいですか!
ギター協奏曲の「アルハンブラ協奏曲」が、とっても好きで、
アルハンブラ宮殿を、この眼で見たい!と思っています。

そして、
実は、このレビューを書いた時、
睦月さんのところにもお邪魔したのですが、
ちょうど、この作品ってあの頃だったんですよね。
コメント欄がすごいことになっていることに気付き、
すごすごと帰ってきてしまいました。
ゴメンなさいね。

でもね、またこうやって睦月さんとお話できていることが、
やっぱり、とってもうれしくて♪

TBさせていただきますね!

投稿: ri | 2007/09/28 02:30

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