太陽
1945年8月、
待避壕で暮らしていた昭和天皇ヒロヒト(イッセー尾形)は、
自分を神と崇める側近たちに孤独を覚えていた。
唯一の安らぎは生物標本を眺める時だけで、
戦争終結に苦悩する天皇は日本が焦土と化す悪夢にうなされる。
そして、連合国占領軍総司令官マッカーサーとの会談の日が訪れる。
私たち、戦後20年近くたった昭和生まれのものにとって、
昭和天皇は、象徴天皇としての穏やかなお顔で、
いつも、ちょこんとしておられたイメージでしかなく、
時折、テレビから聞こえてくる、「あっ、そう。」という、
フレーズが今でも耳に残っている。
その佇まいからは、これほど激動の一生を送られたとは、
とうてい思えないほどである。
生まれながらの「現人神」である天皇が、
人間宣言をするまでを、丁寧に描いた作品。
すべてが事実ではないとわかっていても、
天皇の苦悩と悲しみと孤独が、ひしひしと伝わってくる。
マッカーサーとの会見の内容は、
正式に発表されたものは一切ないらしい。
ただ、マッカーサーは、
「天皇は、日本の最上の紳士であると感じた。」と語り、
天皇陛下は、
「政治、軍事両面で行なった全ての決定と行動に対する
全責任を負い、私自身の処遇を連合国にすべて委ねる。」
と語られたという。
現人神、国家元首としての天皇としてではなく、
数ヶ国語を話され、科学者としての顔も持たれる紳士としての「ヒロヒト」。
この会見で、占領軍の日本統治の方向性が
決定付けられたとも言われている。
天皇陛下は、
「マッカーサー司令官と、どこにも言わないと約束を交わしたことですから。」
と、記者会見でも語られ、
この時の会見の内容を口にされることは、ついになかった。
作品の中でも、紳士としての天皇の姿しか描かれていないこの会見。
何が本当だったかは、今は知る由もない。
イッセー尾形さんは、
私たちにもなじみの深い
昭和天皇を、あまりにも見事に
演じられていた。
この写真も、
ご本人と見間違うほどである。
日本人ではなく、ロシア人監督によって描かれた昭和天皇。
この作品も、公開自体が危ぶまれたらしい。
今年公開された『クィーン』では、
イギリス王室がイギリス人の手によって、
大胆に描かれていた。 (らしい。。。残念ながら未見です。)
このようなことを、日本人自身が描けるようになるのは、
いったい、いつのことなのだろうか。。。
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コメント
昨年の夏、
公開と共に、すごい行列が出来ましたよね。
しばらくしてから
公開が拡大して
私も劇場で観たのですが
正直、意識が飛びそうになった場面もあります(苦笑)
劇場だったから、気を持ち直して観れたようなところもあります。
それでも。。
戦後の天皇の姿からは目が離せませんでした。
人間が神として生きていくことの孤独さ、あきらめ、
それでも求めようとする人としての温もり。
日本人として色々考えさせられました。
ちょうど、「跡継ぎ問題」がうるさかったときですしね。
天皇が神でないことは、充分承知ですが
それでも、まだ、天皇という存在は、日本人にとって大きなものなんでしょうね。
投稿: チョコ | 2007/09/18 20:30
チョコ様
ロシア人監督作品で、イッセー尾形さんが昭和天皇を演じるている。
その姿が、あまりにも昭和天皇ご本人にそっくりで、
前々から、チョット気になっていた作品。
意識が飛びそうになったのも頷けちゃうくらい、
淡々と進むお話でしたね。
私は、DVDでしたので、逆に日本語の意味を理解できなくて、
あれっ、それってどういう意味。。。って見直した箇所がいくつかありました。
外国人監督が作ったせいなのか?って思いましたが、
ただ単に、私の理解力が足らなかっただけなのかもしれません。(苦笑)
でも、イッセー尾形さんは凄かったです。
ホント、そっくり!
最近の、皇室に関する報道などを見ても、
日本人にとっての天皇は、イギリス人にとっての女王とは
少し違った意味を持っているような気がしますね。
そういう私も、つい最近、皇太子が来県され会社の前を通られたので、
しっかり、お手振りに行ってきちゃいました!(爆)
投稿: ri | 2007/09/19 01:57