« プルートで朝食を | トップページ | ちょっと贅沢 »

2007/08/30

麦の穂をゆらす風

 

《DVD鑑賞》

D0020834_732179  

 

 

 

 

 

 

新しき愛は祖国アイルランドを心から慕い

柔らかな風が谷間を渡り、黄金色の麦の穂をゆらしてた

。。。

それよりもなお辛いのは、異国の鎖に縛られる屈辱

だから私は彼女に告げた

夜明けにあの山へ行き、勇敢な男たちに加わると

柔らかな風が谷間を渡り、黄金色の麦の穂をゆらしてた

。。。

 

 

1920年、アイルランド南部の町、コーク。
医師を志す青年デミアン(キリアン・マーフィー)は、
ロンドンの病院での仕事が決まり、アイルランドを離れようとしていた。

故郷を離れる前に、デミアンは友人たちとハーリングを楽しむ。
ゲームが終わり、デミアンは別れの挨拶のためぺギー一家を訪れた。
そこへ英国武装警察、ブラック・アンド・タンズがあらわれる。

一切の集会、スポーツまでも禁じられている理不尽な英国支配に反発し、
ぺギーの孫で17歳になるミホールは、英語名を名乗ろうとせず、
アイルランド名を言ったばかりに、暴行を受け殺されてしまう。

ミホールの葬儀の日。
村の女性が、「麦の穂をゆらす風」を歌って若者の死を悼んだ。

ミホールの姉、シネード(オーラ・フィッツジェラルド)に、
「ロンドンに逃げればすむことなの。」と言われながらも、
旅立とうとするデミアン。

しかし、旅立ちの日、手酷い暴力を受けながらも、
イギリス兵士を列車に乗せることを断固として拒んだ運転士たちの姿を見て、
デミアンは医師になる道を捨て、兄テディ(ポードリック・ディレーニー)とともに
アイルランド独立をめざす戦いに身を投じることを心に決める。

これまで暴力にはまったく縁のない生活をおくり、
人の命を助ける医者になりたいと願っていたデミアン。
そんな彼が、銃を手に敵の命を奪うようになるまで、
たいして時間はかからなかった。

「平和であれば銃を持つことなどありえない青年たち。
暴力、理不尽、裏切り、死。。。それらが、すぐ隣にある。

デミアンが英国の兵士に食って掛かる。
「あと700年、耐えればいいというのか!」
祖国のため、貧しい祖国の人々のための戦い。

激しいゲリラ戦が成果をあげ、その戦いが報われたと歓喜する。
しかし、喜びもつかの間。
それは、もっともっと悲惨で悲しい戦いの幕開けとなってしまう。

あれほど抵抗していたブラック・アンド・タンズとそっくりな軍服を着て、
整然と行進する「アイルランド自由軍」。
どちらが悪いとも正しいとも言い切れない戦い。
それぞれが自分の信じる信念の元に、悲しい結末へと進んで行く。

「二度と顔をみせないで。」

最後にシネードがテディに言う言葉は、
デミアンが幼馴染の母から受けた悲しい言葉と同じだった。

 

****************************************************

 

アイルランドの湿った空気と、緑と岩の大地。
決して明るいとはいい難い淡い光。

それらが、なんとも美しい。

その大地に育まれた女性たちが、とても強く美しかった。
義勇軍の兵士を匿い食事を与え武器を隠し、情報を伝える。
彼女たちがいたからこそ、義勇軍が戦えたことがよくわかる。

シネードの祖母ペギー、母バーナデットを演じたのは、
ほとんど演技経験もない、コークの住民の方らしい。
それが、なんともリアリティーをもって、私たちに迫ってくるのだ。

そして、キリアン・マーフィー。
地元コーク出身の彼は、先日見た「キトゥン」とは全く違った、
革命に身を投じる、強く悲しい“男”を見事に演じていた。

 

「悲しい」という言葉では、物足らない。
「悲惨」といってしまえるものでもない。

最後まで、私は涙が流れなかった。
いや、涙を流すことさえできなかった。

 

アイルランド。

美しい自然の穏やかな国。
という勝手なイメージが先行していた国。

「IRA」、「北アイルランド問題」という言葉は、
何度も聞いたことはあっても、深く考えようとはしなかった。

こんな厳しい歴史と現実を、改めて実感した。

 

エンヤ、U2といったアーティストや、
オスカー・ワイルド、ジョナサン・スウィフト、ラフカディオ・ハーンなど、
たくさんの文学者を生んだアイルランドの大地。

この人たちの作品を思い出すと、
厳しい歴史はあっても、アイルランドの人々は、
穏やかでしなやかで、大地のように強い人々なんじゃないかと思う。

 

いろんないろんなメッセージを伝えてくれる。
そんな作品に出会った気がする。

 

***********************************************************

 

蛇足。

デミアンが囚われた牢の中で、運転士のダンと再会し、
盟友として、真の友人としての絆を深める最初のシーン。

このシーンで牢の壁に刻まれている詩、
二人が一緒に詠みあげる詩が、「愛の園」。

 

   だから私は、愛の園に向かった。
   黒い法衣の司祭たちが、あたりを歩きまわり、
   そして、
   私の喜びと希望を、棘でしばる。 

 

イングランドの詩人、ウイリアム・ブレイクの詩。
そう、あの。。。

「デッド・マン」のウイリアム・ブレイクですよね。。。

 

 

|

« プルートで朝食を | トップページ | ちょっと贅沢 »

コメント

こんにちは。

こういう映画を観たとき
ただ、自分の幸運を感謝してしまう情けない私です。
あの時代
あの国に私が生まれていたら
いったいどうやって暮らしていたのだろう。。想像しかけても
想像がつきません。

なにかメッセージを受け取って映画館を出てきたのか。。と訊かれれば、それさえも怪しい。。
でも。。それでいいのだと思います。。
少なくとも、こういう事実があったんだよ。ということを知ることが出来たから。

見終わって映画館を出たとき
そこは別世界のように明るくて、のんきで、買い物客でいっぱいで
とても不思議な感じがしたのを覚えてます。

ウイリアム・ブレイク。
気がつきませんでした。
すごい!riさん!

でも。。もう1度、確かめるために観ようとは思えない、ですね。


投稿: チョコ | 2007/08/31 16:40

またまたこちらにもお邪魔します。

同じ年頃の息子を持つせいか、終始、母親の目線で将来ある若者たちの闘争を
たまらないほどに胸を痛くしながら観ていました。
観終わった時も、感想を書き終えた時も、
「これは一体、何のための闘いなんだ」という言葉しか出てこなかったのを思い出します。
できることなら、彼らが進みたい道へ進ませてやりたかった。
愛する人を胸に抱ける、あたたかな家庭に帰らせてやりたかった。
今も尚、世界のどこかで、失われなくてもいい命が消えていくことが、
本当に悲しく、やりきれない思いになってしまいます。

投稿: 悠雅 | 2007/08/31 21:34

こんばんわ!
TB&コメントありがとうございます!

そうそう。あのウィリアム・ブレイクなんですよねえ。
私もこの作品を観たときそこに極端に反応してしまいました(笑)。

・・・私もね、全然涙が出ませんでした。
痛烈すぎて、辛辣すぎて、泣くという余裕さえ与えなかった
作品だったように思います。

映画を通して物事を知っていくというのは素晴らしいことで、
この作品も例外ではなくて。
この作品からさまざまな思いを受け取りながら、
「もっとたくさんのことを知りたい、知ろう、学ぼう」と
思ったんです。

無知ほど怖いものはない・・・そういえば、ジョニーも
そんなこと言ってましたね。

投稿: 睦月 | 2007/09/01 22:00

チョコ様

>あの時代 あの国に私が生まれていたら

想像がつかないというより、
想像してみるってことを、考えつきませんでした。
私も、こういう作品を観るたび、
平和な日本という国を、かみしめてしまいます。

決して、楽しい作品ではないけれど、
違った意味で、こういう作品、私は好きです。

「ウイリアム・ブレイク」は、
DVD鑑賞だったので、
思わず、巻き戻しして、確認してしまいました。(笑)

投稿: ri | 2007/09/02 00:10

悠雅様

確かに、「母親目線」はいつもどこかで持っていて、
それだからこそ、涙が流れる作品も多くありますが、
この作品は、涙を流すことさえできませんでした。

>「これは一体、何のための闘いなんだ」

あの後半部分は、あまりにも悲しく、
どうしようもない、怒りにも似た感情で見ていました。

愛する人もあたたかな家庭も捨てて、
なぜ、あんな戦いをする必要があったのか。。。
日本人には、本当の彼らの気持ちは、
決してわからないのだろうと思いました。

アイルランドのことを調べていて、
行き当たった、「オスカー・ワイルド」という名前。
益々、作品が観たくなりました。
まだ、置いてあるレンタル店が見つかりません。(苦)

投稿: ri | 2007/09/02 00:17

睦月様

わぁ、睦月さんも
「ウイリアム・ブレイク」、反応しちゃいました!?
ですよね、もう条件反射かもしれません。(笑)

私、こういう作品を観るたびに、
パソコンに張付いています。
知りたい、知らなきゃ。
と言う、義務感にも似た感覚でネットをさまよっています。

感動的だとか、何度も観たいとかいう作品ではないけれど、
こういう作品は、やっぱり好きな作品です。

>無知ほど怖いものはない

そうそう、確かにジョニーも言っていましたね。
これは、ジョニーの核となる部分の一つだと思います。

ホントに、大切なことだと。。。

投稿: ri | 2007/09/02 00:27

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/198769/7732965

この記事へのトラックバック一覧です: 麦の穂をゆらす風:

» mixiで月収93万円の不労所得を得た男 [40歳サラリーマン]
mixiを使った稼ぎ方を教えます!mixiを楽しみながら、○○○○するだけで、あとは、ずーっとほったらかし状態。あとは、毎月毎月銀行口座にお金が振込まれるのをニヤニヤしながら確認するだけなんです。会員になるための方法も載せてます!先着100名様のみ値下げ実施中。... [続きを読む]

受信: 2007/08/30 08:39

» 麦の穂をゆらす風 [ビター☆チョコ]
1920年、イギリス圧政下のアイルランド南部のコークという町。医師を志すデミアン(キリアン・マーフィー)は、ロンドンに発とうとしていた。しかし、突然現れた、イギリスから送り込まれた武装警察、ブラック・アンド・タンズによって友人を惨殺されたことをきっかけに、アイルランド独立のために義勇軍として活動する決意をする。義勇軍のゲリラ戦はついにイギリスとの停戦にこぎつけるが、そこで結ばれた講和条約はイギリスの影響が色濃く残ったものだった。講和条約の賛否をめぐって、争いはアイルランド国内の内戦へと変わっていく。... [続きを読む]

受信: 2007/08/31 16:40

» 麦の穂をゆらす風 [悠雅的生活]
静かな風が峡谷をわたり黄金色の麦の穂をゆらしていた [続きを読む]

受信: 2007/08/31 17:07

« プルートで朝食を | トップページ | ちょっと贅沢 »